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『ONE PIECE 50巻』回想シーンに感動:林田力

  1. 2011/06/05(日) 11:36:06|
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本書(尾田栄一郎『ONE PIECE第50巻』集英社、2008年6月発行)は週刊少年ジャンプで連載中の漫画である。1997年の連載開始であり、既に10年以上続いていることになる。連載漫画が単行本50巻になるまで続くというだけでも、ちょっとしたニュースになるが、この50巻はストーリーの節目という意味でも意義深いものがある。

「ONE PIECE」は架空の世界を舞台に、世界の最果ての地にあるとされる「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を求める海賊の冒険を描く漫画である。主人公モンキー・D・ルフィ率いる「麦わら海賊団」は、この50巻目で世界を半周するところまで辿り着いた。この巻の副題は「再び辿りつく」である。そこには、この意味が込められている。「ONE PIECE」の世界も地球と同様、球体になっており、世界を一周すると元の地点に戻る。物語は50巻かけて、ようやく折り返し地点に近づいたことになる。

「ONE PIECE」は仲間とともに冒険を続け、悪人と戦うという少年漫画の王道を行く作品である。しかし「ONE PIECE」が人気漫画の座を長期間保持し続けた理由は、王道を忠実に守っていたからだけではない。「ONE PIECE」の魅力はストーリーの深さにある。

敵を倒す、悪を倒す。これが少年漫画の王道である。しかし、こればかりでは次第に戦いの意味すら希薄化してしまう。これに対して「ONE PIECE」では虐げられた側の痛みや憤りが丁寧に、時には長い回想シーンで描写されている。だから敵を倒した時の感動も大きい。

「ONE PIECE」も連載が長期化するにつれ、戦闘シーンでグダグダ感が生じたことは否めない。仲間が増えるにつれ、それぞれの見せ場を出さなければならず、戦闘が長期してしまう。これはアラバスタ編以降で見られるが、特にエニエスロビーでは顕著であった。それでも「ONE PIECE」は感動的なエピソードが挿入される点が優れたところである。それは50巻にも当てはまる。

50巻では世界政府に従う海賊の王下七武海ゲッコー・モリアとの戦いが展開されたスリラーバーク編が完結する。正直なところ、私にとってスリラーバーク編に対する評価は高くなかった。お化け屋敷風の雰囲気が、これまでの「ONE PIECE」の舞台と比べて違和感がある上、ボスキャラに威厳がなく、あまり強そうに感じられなかった。
http://www.hayariki.net/bleach.htm
しかし、完結編の50巻は、それまでの停滞を打ち消して余りあるほど感動的な内容であった。特に読み応えのあるのが、麦わら海賊団の新しい仲間になるブルックの回想シーンである。宴会で作中歌「ビンクスの酒」の演奏中に回想シーンに入る。そこで描かれる過去の回想シーンは現在のシーンと上手く混ぜられている。

回想シーンも楽しかったルンバー海賊団時代と、仲間が死に絶えた跡に一人で魔の三角地帯(フロリアントライアングル)を彷徨っていた頃の2つの時間帯を並行に描いている。陽気な過去と絶望的な過去、そして新しい仲間と出会い、未来への希望が生まれた現在が作中歌「ビンクスの酒」を背景に対照されている。この回想シーンがあればこそ、ブルックの「生きててよかった」という言葉に実感が生まれる。

「ONE PIECE」の構成力の秀逸さを再認識することができた。物語上は50巻で半分である。ということは100巻以上続きそうである。これからも笑いあり、感動ありのストーリーを描き続けて欲しいと思う。


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