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『それでも企業不祥事が起こる理由』『組織の思考が止まるとき』

  1. 2012/03/30(金) 21:29:06|
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コンプライアンスをテーマとした書籍『それでも企業不祥事が起こる理由』『組織の思考が止まるとき』は日本社会に蔓延する形式的な法令遵守精神を批判する点で共通する。

國廣正『それでも企業不祥事が起こる理由』(日本経済新聞出版社、2010年)は弁護士による企業不祥事をテーマとした書籍である。「法律は守っている」と考えている企業でも企業不祥事が続発する理由を明らかにする。ここにはコンプライアンスに対する誤解がある。コンプライアンスは「法令遵守」と訳されがちであるが、これが躓きの石である。著者はコンプライアンスを企業に対する社会的要請を正確に把握し、これに応じて行動することと位置づける。

これは重要な指摘である。法の網の目をくぐる悪徳業者はコンプライアンスに反する企業である。たとえばマンション販売業者が不利益な事実を隠して新築マンションを販売したとする。悪徳不動産業者ならば「嘘はついていない」と開き直るだろう(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、13頁)。しかし、不動産という一生に一度あるかないかの大きな買い物をする消費者からの要請を完全に無視している。

そして形式的に法を守りさえすればいいという形式的コンプライアンス精神は犯罪者の思考であり、実際には往々にして法律に違反している。何故ならば消費者の権利を保護するなどの法の目的を無視しているからである。東急不動産だまし売り裁判でも東急リバブル・東急不動産は宅地建物取引業法の重要事項説明義務を免れたつもりになっていたが、消費者契約法違反(不利益事実不告知)で敗訴した。

郷原信郎『組織の思考が止まるとき 「法令遵守」から「ルールの創造」へ』(毎日新聞社、2011年2月26日)は日本の組織のクライシス(危機)の現場を検証した書籍である。扱う事例は検察の証拠改竄事件やトヨタのプリウスリコール問題、原子力発電所の点検漏れなど幅広い。ここでも単に法令の遵守に終始することなく、社会からの要請に応えることこそがコンプライアンスの本旨と主張する。

残念なことに法令を遵守しさえすればいいという誤った形式的なコンプライアンス精神は企業だけの問題ではない。行政にも根強い。行政には法令通りにやっていることを根拠に国民からの疑問の声を封殺する姿勢がある。

たとえば除染による放射性物質の拡散の問題を指摘した市民団体・市民が求め創るマニフェストの会の公開質問状に対し、古川道郎・川俣町長は以下のように答えた。

「除染後の放射性物質の収集については、環境省が発行している『除染関係ガイドライン』および福島県が発行している『除染業務に係る技術指針』に基づき収集します。また、その保管については、前述の『除染関係ガイドライン』に従い川俣町の地勢・地形に適した仮置き場を設置します」(林田力「古川道郎・川俣町長が除染についての公開質問状に回答」PJニュース2012年3月5日)

除染の危険性に対する疑問には答えず、環境省や福島県の基準に従っているから問題ないという姿勢である。この種の姿勢は究極的には「お上が決めたものであるから、臣民は黙って従え」という姿勢につながる。この種の姿勢は新種の公害被害に無力である。「法令がないから被害が出ても仕方がない」という姿勢では憲法が生存権などの人権を保障している意味がない。

その中で二子玉川ライズ住民訴訟を和解的解決で終結した保坂展人・世田谷区長の姿勢は注目に値する。二子玉川では再開発による住環境破壊が大きな問題になっているが、保坂区長は「再開発区域周辺の環境影響に対しましては、区としても環境に十分留意して、法令に基づく環境影響評価の手続きに則った適切な対応はもとより、きめ細やかな対応を事業者に求めてまいります」と陳述した。
http://www.honzuki.jp/book/status/no65971/index.html
ここでは「法令に基づく環境影響評価の手続きに則った適切な対応はもとより」と法令以上の「きめ細やかな対応」を求めることを宣言する(林田力「二子玉川再開発住民訴訟終結で公害行政から一歩踏み出した保坂世田谷区政」PJニュース2012年3月19日)。法令遵守はもとより、それ以上の対応を追及することが実質的なコンプライアンスになる。
林田力,上田清司埼玉県知事は東京電力を罵るよりも不買運動を
http://www.pjnews.net/news/794/20120219_2
林田力,フランス政府のマドモアゼル廃止を歓迎
http://www.pjnews.net/news/794/20120226_1


安易な大学中退者は青山テルマを見習おう

  1. 2012/03/28(水) 23:21:03|
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歌手・青山テルマは上智大学を卒業したことを2012年3月26日に自身のブログ「青山テルマのONE WAY」で報告した。着物に袴姿の写真を掲載した上で「この度、私 5年半もかけて、上智大学を卒業しました」と記述する。単位を落としたために5年半がかりの卒業となったという。安易な大学中退者が多い中で立派である。素直に卒業を祝したい。卒業おめでとう。

テルマはトリニダード・トバゴ人と日本人のクォーターである。2008年1月リリースのセカンドシングル『そばにいるね』がヒットし、女子大生歌姫として注目を集めた。これまでも大学生との対談などで「学校に行った方がいい」と話しており、言行一致、主張の一貫性を示した。ブログには以下のように記載する。

「もしそんな私が学校を辞めてしまったら、私が言った言葉がすべて嘘になってしまうのと同時に、これから私が歌ったり、発信する『言葉』が軽く聞こえてしまう。それが一番嫌だった。それが一番ダサイと思ったの」

何年かかったとしても卒業することは立派である。中退で偉そうにしている人間もいるが、テルマの姿勢を見習ってほしいものである。

大学入学者には卒業することが当然のこととして期待される。その当たり前のことができずに現実から逃げ出す安易な中退者が多い。安易な理由による中退は経済的事情で進学を断念した学生や中退せざるを得ない学生らに失礼である。高等教育という希少なリソースの無駄遣いになる。親に学費を払ってもらいながら学校に行かず、アルバイトをしても服や遊びのためにしか使わなかった中退者は最低である。

大学は入学も容易ではないが、卒業も困難である。難関大学ほど単位認定も厳しく、卒業も難関である。合格時や入学時ばかり話題になるが、卒業して初めて賞賛に値する。たとえ偶然やラッキーや裏口で入学できたとしても、大学のレベルについていくことは難しい。大学での学問は高校までの勉強とは質的に異なる(林田力「大卒から感じた高卒のギャップ」PJニュース2010年11月23日)。
http://www.pjnews.net/news/794/20101122_7

卒業したとしていないでは大違いである。最終学歴に「○○大学中退」と書き、大学中退を高卒よりも立派な肩書と勘違いしている愚か者も多いが、実態は正反対である。中退は大学受験で不合格になることよりも恥ずかしい。受験の不合格は履歴書に書かれないが、中退は、その後の人生にも付きまとう。逃げ出した後悔を抱えて生きていかなければならない。

後で「卒業しておけばよかった」と後悔するよりも、何年かけても大学は卒業した方がいい。その方が悔いは残らない。人生の中で学生生活の時間を長く取れることは見方によっては幸せである。卒業までに身に着けた知識や考え方は将来様々な場面で役に立つことになる。
林田力『東急不動産だまし売り裁判』
http://hayariki.sapolog.com/
林田力 新聞
http://hayariki.net/nikkan.htm


「終わりよければ全てよし」の虚偽

  1. 2012/03/25(日) 17:32:03|
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「終わりよければ全てよし」という言葉には虚偽がある。最後だけハッピーエンドでも途中経過が悪ければ、それを誇りに思うことはできない。「終わり良ければ、全て善し」の信奉者は過去を振り返ることができない浅はかな愚か者である。
http://hayariki.webnode.com/
林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』[本]
http://hayariki.net/index2.html
東急電鉄が大井町線高架下住民に立ち退きを迫る
http://hayariki.net/tokyu/ohimachi.html


『ハングリー!』ハングリー精神で大団円:林田力

  1. 2012/03/24(土) 21:52:04|
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フジテレビ系ドラマ『ハングリー!』が、2012年3月20日放送の「空腹が人を幸せにする! 俺の料理を食ってくれ」で最終回を迎えた。ドラマの序盤からの一貫性を保ったハングリー精神で大団円を迎えた。

麻生時男(稲垣吾郎)の甘い言葉に乗っかってハラペコキッチンを廃業した山手英介(向井理)らであったが、現実は甘くなかった。藤沢剛(川畑要)は先輩からのパワハラのストレスで酒浸りになった。住吉賢太(塚本高史)は同性の先輩からセクハラを受ける。実は麻生も一ヶ月ももたないと予想しており、仲間の切り捨ては織り込み済みという醜い資本の論理が提示される。

現実に二子玉川東地区再開発地域や東急大井町線高架下にあった自営業者は立ち退きによって苦境に陥っている。「立ち退かされたが、みんなで頑張って危機を乗り越えた」的なナイーブなハッピーエンドにしない点でリアリティがある。

焼け野原から経済大国にしてしまうような前に進むことしかできない愚かな日本社会では心機一転という言葉に前向きなイメージが強いが、それは社会の不合理に甘んじるだけの奴隷根性である(林田力「日本社会の非歴史性が問題だ」PJニュース2010年6月26日)。

英介は店を潰した敵である麻生の言葉に流されただけである。それでも一流シェフとなって自分の料理を世界に伝えることに価値を見出す考えも根強いが、その種の心機一転幻想を宝飾デザイナーの金沢亜矢子(矢田亜希子)が打ち破る。彼女の心機一転は会社を解散し、離婚し、レストランを立ち退かせて賃貸マンションを建設するという破壊と逃げでしかない。

英介は世界に通用する一流シェフになることよりも大切なことに気づく。地元の子ども達は「ハラペコキッチンがなくなって寂しい」「父さんの給料日にハラペコキッチン」に来ることが楽しみであったと語る。麻生の申し出を毅然として拒否する英介が決まっている。

「俺らを待ってくれている客がいる限り、ここでレストランをやりたい」

「日本で、あの倉庫で、あの店を続けたい。世界に味を届けるよりも、そばにいる腹が減っている奴らにうまいものを出す。(麻生のような)立派な三十歳になるより、俺にはそれが合っている」

怒った麻生に「あんな店を潰してやる」と言われるが、むしろ英介は「ハングリー精神をかき立てられる」と意気盛んである。ドレスコードのあるフランス料理店を出た途端に英介はネクタイを緩める。社蓄的文化の対極に位置するカジュアルなロックのテイストを体現している。

大楠千絵(瀧本美織)は「英介さんの料理はここだから美味しい。かしこまったら味が出ない」と本質を突いた指摘をする。これに対して、外から覗いていた麻生は「馬鹿だな。芸術は徹底的に完成されているから価値がある」と呟く。

ドラマでは大団円にするために最後は悪役も善人にしてしまうことがある。それは「終わり良ければすべて良し」的な浅はかさと幼稚な筋書きである。「le petit chou」の経営権を奪い、山手太朗(大杉漣)以外は真相を知らないが、ハラペコキッチンも潰した麻生が主人公の導き手となることは白々しい。麻生は悪いだけの人間ではないが、英介とは相いれない価値観の持ち主として、悪役ながらキャラクターに一貫性を持たせた。

『ハングリー!』は英介と橘まりあ(国仲涼子)と千絵の三角関係も魅力である。ドラマでは決着がつかないが、敗者が出ない点で後味がいい。序盤では、レストラン経営に懐疑的なまりあよりも英介の料理に感激する千絵を応援したくなる。しかし、まりあと英介の出会いのエピソードを知ってからは複雑になる。ラストは、まりあが年上女性として余裕を見せて温かい。(林田力)
林田力『こうして勝った』FriendFeed
http://friendfeed.com/hayariki
林田力:二子玉川ライズ問題
http://www.hayariki.net/futako4.htm


『ハングリー!』夢や生活を破壊する立ち退き:林田力

  1. 2012/03/18(日) 12:35:03|
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フジテレビ系ドラマ『ハングリー!』が、2012年3月13日に第10話「最後の客を最高の仲間と料理で」を放送した。最終回を前にして急展開になる。東急不動産だまし売り裁判のような不動産トラブルに苦しむ人々にとっては残念な展開になった。

ハラペコキッチンに解散の危機が迫る。麻生時男(稲垣吾郎)の誘惑には動じなかった山手英介(向井理)らであったが、意外なところに問題があった。大家・金沢亜矢子(矢田亜希子)からの立ち退き要求である。

この大家は味覚音痴という点で料理をテーマにしたドラマの価値の対極にある。立ち退きを迫る人物にネガティブなイメージを与える効果的な演出である。物件を管理する不動産業者の名前は阿久徳不動産であり、悪徳不動産と同じ響きという遊び心もある。

英介らは別の場所で営業を続けようと物件探しを始めるが、家賃や開店費用の問題で思うようにいかない。立ち退きによって商店主の夢や生活が潰れてしまうことも、立ち退かされた後に心機一転できないことも日本社会の現実を反映したリアリティがある。

東京都世田谷区では東急電鉄・東急不動産らの進める二子玉川ライズによって数多くの商店主が閉店を余儀なくされた(林田力『二子玉川ライズ反対運動』)。品川区の大井町の東急大井町線高架下の店舗は東急電鉄から立ち退きを迫られ、路頭に迷わせられようとしている(林田力「東急電鉄が大井町線高架下住民に立ち退きを迫る」)。

社会性のある展開であるが、提示された解決策には社会性もリアリティもない。店を潰すために画策した麻生の筋書き通りで終わってしまう。事前の宣伝で「ハラペコキッチンに解散の危機」と煽っておいて、本当に解散してしまうならば芸がない。

もともとフランス料理の格式を無視したロッカーのフランス料理というミスマッチがドラマの魅力である。フレンチの格式を無視している点は麻生から酷評され、それに乗せられて英介も高級店志向に走って仲間との関係にひびが入った(第7話「覆面調査員は見た!友情と恋亀裂!店は分裂」)。

しかし、英介は考えを改め、自分達の原点に立ち戻ることで危機を乗り越えた。ハラペコキッチンはフレンチの格式を求めず、ロックテイストのフランス料理店であると再確認された。それにも関わらず、最後で麻生の計画に乗って本格的なフレンチ・シェフを目指すならばドラマで提示された価値の論理矛盾になる。

麻生の立ち位置は主人公の厳しい導き手よりも、主人公を潰しにかかる本人は大真面目な道化役がふさわしい。麻生の渾身のプロポーズも主人公が歯牙にもかけないから笑いになるのであって、主人公が受けてしまったら二人して気持ち悪い精神世界に突入することになる。それを周囲の登場人物も応援するならば、カルト的な自己啓発の世界になってしまう。

大楠千絵(瀧本美織)の最後の食事のシーンは心温まる感動的な展開になったが、それは英介の経営するカジュアルな店だから成立する。麻生コーポレーションの経営する店では無理である。金持ち相手に高級料理を提供することが、これまでドラマが志向してきた料理人の価値ではない。庶民的な食いしん坊の千絵を喜ばせることは料理人の価値である。

麻生の計画に乗ってハラペコキッチンを閉めることは、もっともらしい言い訳で取り繕っても、自分達の提供した価値を失う敗北である。救いは閉店後に主人公が悔し涙を流したことである。焼け野原から経済大国にしてしまう前に進むだけの愚かなガンバリズムに囚われていない。タイトルにあるハングリー精神を貫けるか最終回の展開が注目される。
http://hayariki.net/index2.html


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