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林田力ブログ書評『ワンピース』50巻

  1. 2013/03/18(月) 20:08:09|
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本書(尾田栄一郎『ONE PIECE第50巻』集英社、2008年6月発行)は週刊少年ジャンプで連載中の漫画である。1997年の連載開始であり、既に10年以上続いていることになる。連載漫画が単行本50巻になるまで続くというだけでも、ちょっとしたニュースになるが、この50巻はストーリーの節目という意味でも意義深いものがある。

「ONE PIECE」は架空の世界を舞台に、世界の最果ての地にあるとされる「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を求める海賊の冒険を描く漫画である。主人公モンキー・D・ルフィ率いる「麦わら海賊団」は、この50巻目で世界を半周するところまで辿り着いた。この巻の副題は「再び辿りつく」である。そこには、この意味が込められている。「ONE PIECE」の世界も地球と同様、球体になっており、世界を一周すると元の地点に戻る。物語は50巻かけて、ようやく折り返し地点に近づいたことになる。

「ONE PIECE」は仲間とともに冒険を続け、悪人と戦うという少年漫画の王道を行く作品である。しかし「ONE PIECE」が人気漫画の座を長期間保持し続けた理由は、王道を忠実に守っていたからだけではない。「ONE PIECE」の魅力はストーリーの深さにある。

敵を倒す、悪を倒す。これが少年漫画の王道である。しかし、こればかりでは次第に戦いの意味すら希薄化してしまう。これに対して「ONE PIECE」では虐げられた側の痛みや憤りが丁寧に、時には長い回想シーンで描写されている。だから敵を倒した時の感動も大きい。

「ONE PIECE」も連載が長期化するにつれ、戦闘シーンでグダグダ感が生じたことは否めない。仲間が増えるにつれ、それぞれの見せ場を出さなければならず、戦闘が長期してしまう。これはアラバスタ編以降で見られるが、特にエニエスロビーでは顕著であった。それでも「ONE PIECE」は感動的なエピソードが挿入される点が優れたところである。それは50巻にも当てはまる。

50巻では世界政府に従う海賊の王下七武海ゲッコー・モリアとの戦いが展開されたスリラーバーク編が完結する。正直なところ、私にとってスリラーバーク編に対する評価は高くなかった。お化け屋敷風の雰囲気が、これまでの「ONE PIECE」の舞台と比べて違和感がある上、ボスキャラに威厳がなく、あまり強そうに感じられなかった。

しかし、完結編の50巻は、それまでの停滞を打ち消して余りあるほど感動的な内容であった。特に読み応えのあるのが、麦わら海賊団の新しい仲間になるブルックの回想シーンである。宴会で作中歌「ビンクスの酒」の演奏中に回想シーンに入る。そこで描かれる過去の回想シーンは現在のシーンと上手く混ぜられている。
http://www.hayariki.net/index2.html
回想シーンも楽しかったルンバー海賊団時代と、仲間が死に絶えた跡に一人で魔の三角地帯(フロリアントライアングル)を彷徨っていた頃の2つの時間帯を並行に描いている。陽気な過去と絶望的な過去、そして新しい仲間と出会い、未来への希望が生まれた現在が作中歌「ビンクスの酒」を背景に対照されている。この回想シーンがあればこそ、ブルックの「生きててよかった」という言葉に実感が生まれる。

「ONE PIECE」の構成力の秀逸さを再認識することができた。物語上は50巻で半分である。ということは100巻以上続きそうである。これからも笑いあり、感動ありのストーリーを描き続けて欲しいと思う。

『日本のすがた2013』林田力ブログ書評

  1. 2013/03/18(月) 08:00:39|
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矢野恒太記念会『日本のすがた2013』は統計データに基づく社会科資料集である。小学校高学年から中学生向きであるが、文字通り日本の姿を知る上で大人にも有益である。最新の統計データに基づいており、自分が学校で習った頃との相違も分かる。

たとえば、かつて日本の代表的な工業地帯は四大工業地帯と称していた。京浜、中京、阪神、北九州である。しかし、今では北九州が地盤沈下し、三大工業地帯となっている。官営八幡製鉄所など国策としての殖産興業は過去の歴史になっている。代わって全国各地に新しい工業地帯が誕生している。たとえば茨城県北東部と福島県南東部にまたがる常磐工業地帯などである(124頁)。福島第一原発事故は農業だけでなく、日本の工業にも打撃を与える。福島の復興は日本にとって重要である。

住宅に関する統計では空き家が798万戸もある。これは住宅総数の13・9%にもなる(197頁)。この状況で新築マンションを新たに建設することは社会的には大きな無駄である。この主張は二子玉川ライズ反対運動で主張されている(林田力『二子玉川ライズ反対運動2』「二子玉川ライズは少子高齢化社会に不適合」)。これは統計データで裏打ちされた。

また、持ち家と賃貸の比率も興味深い。1968年から2008年まで持ち家と賃貸の比率は変わっていない。国は住宅ローン減税や固定資産税の減免など持ち家ばかりを優遇する住宅政策を採用しているが、それで国民の住環境が改善された実感は乏しい。分譲住宅の購入動機には「家賃は高い」「高齢になると家を借りにくくなる」という消極的な理由が一定の割合を占めており、外的要因で分譲に誘導されてしまっている面がある。
http://www.hayariki.net/eco/9.htm
廉価で良質な賃貸住宅の供給こそ住宅政策で求められる(林田力「「もめタネ研」で東急不動産だまし売り裁判から住宅政策を検討」JANJAN 2010年2月9日)。統計上も持ち家は増えておらず、持ち家推進が全国民のニーズに合致していない。持ち家取得推進政策は不動産業者を儲けさせるだけで、国民は住宅ローンに縛られる(林田力「住宅購入促進は景気 回復に役立つか」PJニュース2010年3月15日)。統計データは住宅政策見直しの資料になる。

最後に『日本のすがた2013』の章立てについて論評する。『日本のすがた2013』は第3章「農林水産業」、第4章「日本の工業」など日本の産業について述べた後で第7章「国民の生活」を説明する。日本の政治は産業界の要求が優先され、国民の生活が第一になっていないと批判されている。社会科資料集でも国民の生活が第一になっていない。日本社会の意識転換は非常に骨の折れることであると実感した。


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