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『ミスターフィギュアのフォット、一息』

  1. 2013/07/11(木) 23:30:04|
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恒川憲一『ミスターフィギュアのフォット、一息』(セルバ出版、2013年)は「ミスターフィギュア」と名付けられたフィギュアの写真集である。フィギュアの写真集と言えば貴重なフィギュアやフィギュアのコレクションを写すイメージがあるが、そうではない。被写体は常に同じフィギュア、自分そっくりのフィギュアである。

そのフィギュアを面白く写した写真集である。何気ないシーンでもコメントと合わせることで面白くなる。駄洒落も多く、ユーモラスな写真集になっている。例えばイチゴとフィギュアが一緒に写っている写真には「一期一会」とのコメントが付されている(1頁)。イチゴと一期をかけている。

個人的に面白いと感じた写真は「敷居が高い」である(56頁)。5センチの敷居の前に5センチのフィギュアを置いたためにフィギュアから見れば高い壁になる。それを「敷居が高い」と表現する。普通の人にとっては何ともないものでも、他の人にとっては、ものすごく敷居が高くなる。バリアフリーやユニバーサルデザインにも通じる含蓄がある。

現代に生きる日本人にとって東日本大震災は衝撃であった。『フォット、一息』でも東日本大震災に言及した写真がある。「永遠に語れ陸前高田一本松」が相当する(80頁)。フィギュアが陸前高田一本松を眺めている写真である。この写真のフィギュアは濡れており、水滴が写っているという芸の細かさである。単に遠くから頑張れと言うのではなく、津波被害を受けた被災者と同じ目線に立とうとしている。被災者の苦しみに寄り添う姿勢に意味がある。
http://www.hayariki.net/10/29.htm
ここからは少し社会性のある写真が続く。学生運動(81頁)や平和(83、84頁)をテーマとした写真があり、世代を感じさせる。著者は自己をビジネスマンと規定しており、それほど政治性が強い人物には見えない。『フォット、一息』も政治性の強い書籍ではない。それでも世代的経験・世代的意識というものが強烈であることが分かる。この点は著者よりも若い世代とはギャップのあるところである。


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