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日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか

  1. 2013/07/30(火) 21:41:04|
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今野晴貴『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか』(星海社新書、2013年)は日本の労使関係をテーマとした新書である。日本の労使関係の問題点を指摘し、改革の方向性を提言する。著者はブラック企業の告発で名高い人物である。ブラック企業はブラック士業と共に現代日本の大きな社会問題である。そのために著者も注目されているが、ブラック企業の見分け方ばかりに関心を寄せられる状況には批判的である。

いくら努力しても見分けることには限界があるためである。また、「見分けろ」という議論は、「見分けない奴が悪い」とブラック企業の正当化になりかねないためである(14頁)。これは東急不動産だまし売り裁判の経験からも納得する(林田力『東急不動産だまし売り裁判こうして勝った』ロゴス)。消費者や労働者に問題物件や問題企業を見分けさせるというスタンスは被害者の救済にならない。

本書では日本の現状では権利は闘って勝ち取らなければならないと主張する。「争う気概のある人とそうでない人とで、大きな差が出てくる」(84頁)。この指摘も東急不動産だまし売り裁判の経験から納得できる。任意の段階では東急不動産は話し合いにも応じなかった。

一方で本書は「だから被害者は頑張れ」と個人の頑張りで解決させようとはしない。 「「普通の人」でも正義を争えるような社会的なサポート体制が、いま、求められている」(87頁)。ブラック企業に対する反発には特殊日本的精神論・根性論への反発もある。ブラック企業が構造的問題としても、ワタミの渡辺美樹個人が憎しみの対象になる理由も、その精神論にある。しかし、日本では反権力側にも精神論的なものがある。個人の頑張りの限界を認識し、社会的なサポート体制を志向する著者のスタンスは健全である。

福祉の貧困と土建国家の関係についての指摘も興味深い。「社会福祉が劣悪である一方で、企業福祉を国民に広く与えるべく、地方への「利益誘導」が図られた。その手法が公共事業である」(200頁)。管見は開発と福祉がトレードオフと主張してきた。開発予算を増大する政府は福祉予算を削減する傾向がある(林田力『二子玉川ライズ反対運動4』「区民負担増ではなく二子玉川ライズ見直しを」)。本書では福祉が貧困であるために公共事業でばらまき、企業を潤わせ、企業福祉を充実させようとしたという関係が描かれる。日本の公共政策は本末転倒である。

労働者を使い捨てにするブラック企業は残酷である。その理由を本書は労働者が商品として「一回雇って、生命力を使い果たして、それで関係を終わりにできてしまう」ためとする(226頁)。これを「一見さん」の恐怖と表現している(225頁)。この表現は言い得て妙である。これも東急不動産だまし売り裁判と共通する。マンションだまし売りも不動産購入が一生に一度あるかないかの買い物であるために不動産業者はリピーターを気にせず、売ったら売りっぱなしができてしまう。
http://www.hayariki.net/10/46.htm
本書には興味深い洞察や貴重な提言が多い。重要な点はブラック企業が「従業員を大切にする」と言われてきた日本的経営の対極ではなく、連続的なものと位置付けていることである。そして改善策をジョブ(職)の範囲内での仕事をすることとしていることである。残念ながら日本人には露骨なブラック企業に批判的な人でも上記の提言を味気ないものと捉える意識があるが、それこそが渡辺美樹的な精神論をのさばらせることになる。

本書で驚かされた点は労働者の権利の話をしていても、日本国憲法への言及が全くないことである。日本国憲法には労働基本権や生存権、平等権など労働者のバックボーンになりうる規定がある。

本書は国が与えてくれる他力本願な権利意識ではなく、会社との契約関係に基づいて自分自身が実現する権利を重視している。また、社会経済的関係から労使関係を論じている。その意味では日本国憲法からアプリオリに労働者の権利を論じることはそぐわないものではある。

しかし、反貧困運動が生存権(日本国憲法第25条)を思想的な武器にしていることを踏まえると、日本国憲法に全く触れていないことは大きな驚きである。ブラック企業問題の当事者にとって日本国憲法は身近なものではないようである。これは現代的な社会問題に対応できていない護憲運動の反省を迫るものである。
The Petition Against TOKYU Land Corporation Fraud eBook: Hayashida Riki: Amazon.in: Kindle Store
http://www.amazon.in/dp/B00DY7796O
東急不動産だまし売り裁判訴状 の書評 / 林田力 / 林田力 / |本が好き!
http://www.honzuki.jp/book/208481/


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