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『黒王妃』林田力amazonレビュー

  1. 2013/08/07(水) 21:05:08|
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佐藤賢一『黒王妃』はカトリーヌ・ドゥ・メディシィスを主人公とした歴史小説である。カトリーヌは黒い衣装を好んで着たことから黒王妃と呼ばれたという。

カトリーヌと言えば、権謀術数でフランス宮廷を支配した人物として名高い。しかし、『黒王妃』では最初は平民の娘と軽視され、我慢を強いられる毎日であった。地味な王妃、日陰者の王妃、大人しい王妃とみなされていた。

息子が王位を継ぎ、国母となった後も傲慢な嫁のメアリ・ステュアート(マリー・ステュアール)の横暴と対立した。メアリはエリザベス一世との対立から悲劇の女王と位置付けられることが多いが、『黒王妃』では「あんな大女なんか」と扱き下ろされている(41頁)。「土台が思慮分別に欠ける女」とも評されている(321頁)。
http://hayariki.net/10/52.htm
当時のフランスはユグノー戦争の最中である。カトリーヌはユグノーの弾圧者、聖バルテルミーの虐殺の主導者として悪名高い。しかし、『黒王妃』ではカトリーヌは猶和政策を追求していたが、プロテスタントの増長によって弾圧せざるを得なかったとしている。後にブルボン朝の創始者となるユグノーの大物ナヴァール王アンリは田舎者で、ずんぐりむっくり、「あげくが臭かった」と描写されている(384頁)。人間性に対する悪印象を臭いに置き換える設定は巧妙である。

『黒王妃』は聖バルテルミーの虐殺に至る現在進行形の物語とカトリーヌの回想が交互に進行する。その中で心理的効果を狙ったファッションと思われた黒衣がカトリーヌにとって意味があるものであることが明らかになる。構成が巧みである。
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