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森薫『乙嫁語り』

  1. 2012/06/27(水) 23:32:10|
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森薫『乙嫁語り』は19世紀後半の中央アジアを舞台とした歴史漫画である。12歳の少年・カルルクの元に嫁いできた8歳年上の娘・アミルを中心にシルクロードに生きる遊牧民と定住民の生活を描く。

中央アジアは日本人には馴染みない地域であり、それだけで新鮮である。中央アジアの歴史物があるとしてもジンギスカンやチムールなど男の征服者の物語が多い。これに対して『乙嫁語り』は女性の物語である点でも新鮮である。政治から民衆の生活や意識を重視する近年の歴史学の傾向にも合致する。

『乙嫁語り 4巻』ではロシアの圧迫という政治的な話も登場するが、後半の双子のエピソードが吹き飛ばしてくれる。パリヤの見合いは主観的には大失敗であったものの、実は上手くいっているという人情の機微を描いている。

後半は双子の悪童ライラとレイリの物語である。ライラとレイリは表紙にも描かれている。アンカラに向けて旅を続ける英国人スミスは、ひょんなことから双子に出会う。同じ顔で同じ性格の双子が元気いっぱいに暴れ回る。この巻から読み始めた人も楽しく読み進められるエピソードである。
http://blog.goo.ne.jp/hedo

双子はアラル海に面した漁村で生まれ育った。シルクロードには遊牧民の印象が強いが、『乙嫁語り』は定住民も描いている点も特色である。『乙嫁語り 4巻』では漁民の生活が描かれる。

現代のアラル海はソビエト連邦時代の開発で生態系が破壊され、漁業は成り立たなくなっている。その意味で貴重な生活史でもある。開発による環境破壊の悲劇は「コンクリートから人へ」が不十分なままになっている日本も他人事ではない。(林田力)

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