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早川和男『居住福祉』v 林田力 wiki記者レビュー

  1. 2012/07/28(土) 11:59:04|
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早川和男『居住福祉』(岩波新書、1997年)は福祉の観点から住まいを考える新書である。住まいの貧困が日本社会の人心の荒廃の一因であるとし、居住福祉社会を新しい時代の文化として作り上げていくことを訴える(15頁)。
北欧では「福祉は住居にはじまり住居におわる」と言われるが、日本の住まいに対する意識は低いと「はしがき」で著者は指摘する。著者の嘆きは正しい。住まいは人権という意識の低さがゼロゼロ物件のような貧困ビジネスを横行させている。
『居住福祉』の優れている点は住まいに関する様々な問題を「居住福祉」という観点で網羅していることである。住宅や街づくりは社会保障に密接に関連する分野である。マンションだまし売りの東急不動産だまし売り裁判も、大型開発による住環境破壊の二子玉川ライズも、東急電鉄による東急大井町線高架下住民追い出しも、貧困ビジネスのゼロゼロ物件も居住福祉の貧困が原因である。それらと闘う運動は居住の権利を守る運動である(170頁)。
日本の住宅政策の問題点は、住宅の供給と確保を市場原理に委ねていることである(103頁)。総理府社会保障制度審議会は1962年の「社会保障制度の総合調整に関する基本政策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」で以下の勧告をした。
「国の住宅政策は比較的収入の多い人の住宅に力を入れているので、自己の負担によって住宅を持つことができず、公営住宅を頼りにするほかない所得階層の者はその利益にあずからない。これでは社会保障にならない。住宅建設は公営住宅を中心とし、負担能力の乏しい所得階層のための低家賃住宅に重点をおくよう改めるべきである。」
しかし実態は正反対の方向に進んだ。「戦後、企業および公共団体は一貫して土地と住宅を利潤追求の手段にし、それゆえに政府も自治体も、居住の権利をタブー化せざるをえなかった。」(171頁)。だからマンションだまし売りの東急不動産だまし売り裁判や貧困ビジネスのゼロゼロ物件など悪徳不動産業者が横行する。
『居住福祉』では転居の弊害も指摘する。「一般に高齢になってからの転居は「精神的卒中」といってよいほど深刻な事態を招きがちで、避けるにこしたことはない。」(110頁)。古くから居住している東京都品川区の東急大井町線高架下住民を追い出す東急電鉄は非道である(林田力『二子玉川ライズ反対運動2』151頁)。
転居の弊害に対する日本人の意識が低い点も住まいが市場原理に委ねられていることが背景である。「日本の不動産業者や仲介業者は買い替え、引っ越しで食っているのだから警告するはずはない。」(113頁)。
ジョン・メージャー(John Major)英国首相は「ホームレスは目障り。観光客や買い物客を繁華街から遠ざける」と発言して世論の猛反発を浴びた。しかし、日本ではホームレス排除が社会の無関心の上に強行されている。
「わが国には、市民の生命や環境の破壊、住民の追い出しなど反社会的行動を恥じない企業が多すぎる」(192頁)。東急リバブル・東急不動産・東急電鉄や宅建業法違反のゼロゼロ物件業者は典型である。
「住宅問題はたいてい、個人の問題として個別にあらわれる。」(197頁)。それ故に『東急不動産だまし売り裁判』という形で公刊されることに意義がある。
再開発の問題への指摘も重い。「町なかの民間借家などに住む住民が、行政の再開発事業とそれにからむ暴力的地上げなどで追い立てられる事態が再びぶり返し、人々を居住不安に陥れている」(8頁)。これは東京都世田谷区の二子玉川ライズや品川区の東急大井町線高架下に該当する(林田力『二子玉川ライズ反対運動2』)。二子玉川では駅前の中小地権者は追い出され、東急電鉄・東急不動産の商業施設「二子玉川ライズ ショッピングセンター」やオフィスビル「二子玉川ライズ オフィス」になってしまった。東急大井町線高架下住民は東急電鉄から一方的な立ち退き要求を受けている。
住居で日照が重要であることを明らかにする。阪神大震災で「隣の家が壊れて空き地になって、自分のアパートに日があたるようになった。今までは日があたらず、湿気も多かった。」という住民は「かぜひかなくなった。咳一つでない。」と語る(38頁)。
別の箇所では「日照・通風・採光の不良は室内を不衛生にし、呼吸系疾患や骨粗鬆症やくる病などの原因となるだけでなく、健康回復への意欲を失わせる。通風の悪さによる夏の暑さは食欲不振などから体力の衰弱をもたらしている。」(66頁)。
これは東急不動産だまし売り裁判でも共通する。東急リバブル東急不動産は隣地建て替えという不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りした。隣地建て替えにより、日照・眺望がなくなり、通風も悪化した。消費者契約法によって売買契約を取り消し、売買代金を取り戻した(林田力『東急不動産だまし売り裁判こうして勝った』)。東急不動産だまし売り被害者は東急不動産だまし売りマンションから出ていったことで、以前よりも健康になった。
公園の問題も指摘する。大規模公園を防災公園とする傾向がある。しかし、本書は以下のように批判する。「大規模な公園は、たどり着くまでの距離が遠い、日常的に役立たない、などの欠陥をもっている。日常、市民の居住や生活環境に無関心で、ことさらに防災公園をいうのはまやかしである。」(41頁)。
反対に「長田区内の小さな公園で火が止まった」と住宅地内の小規模公園を評価する(40頁)。二子玉川東地区再開発でも駅前から離れた場所に巨大な防災公園が作られるが、住民のためになっていない。
二子玉川ライズのような再開発そのものが世界的には時代錯誤である。街づくりの先進地域である西ヨーロッパでは都市再開発が中止されている。再開発の弊害が大きいためである。再開発はコミュニティーを破壊する。そのために「既存住宅の修復事業が住宅政策、都市政策の中心になっている。」(114頁)。
開発優先区政からの転換を訴える「新しいせたがやをめざす会」でも、住宅リフォーム助成制度の創設が提言された。新しいせたがやをめざす会の政策案は中小建設業者の振興策として提示されたものであるが、住宅政策からも支持できる。
また、「再開発にともないがちな高層住宅は高齢者や子どもを孤立させることが明らかになるにつれ、高層住宅の建設を中止する国がふえた。既存の高層住宅はこわして三〜六階建て(むろんエレベーターはある)に建て替える。イギリス、フランスなどの都市を訪れると、どこでも高層住宅を次々と爆破して中低層住宅に変えているのに目を見張る。」(114頁以下)。アメリカでは容積率を減らすダウンゾーニングをしている。二子玉川ライズも減築が将来的な目標になる。
http://hayariki.net/0/faqindex.htm


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